エニアグラムメディエイターのための指針 ステップ7
【ステップ7】
・性格タイプの垂直構造(意識のレベル)について理解している。
・意識のレベルについて、性格タイプを理解する上で、どのような尺度として用いればよいかを理解している。
・垂直構造のなかで働く心理的なメカニズムについて把握している。
意識のレベルは、リソ&ハドソン(米国エニアグラム研究所)による各タイプの垂直構造を表わしています。エニアグラムが北米で普及し始めたころ、各タイプについての説明にばらつきがあったこと、それによってあるタイプは健全で、有能、より魅力的であるが、別のタイプについてはどこか不健全、あるいは「ダメな性格」といった印象を与えてしまうことがありました。
日本でももちろんそうで、初期のころのファシリテーターの説明では、たとえばタイプ3は有能な人、タイプ9はなんとなくダメな人、タイプ8は”野生”まるだしの人、タイプ4だけが芸術家的資質を持ち、悩み多き人であるといった”先入観”がもたれるようなタイプの紹介がありました。
しかし、エニアグラムの9つのタイプはまったくの等価で、持って生まれたものの上に築かれた性格のタイプそのものにいい悪いはありません。どのタイプがより有能であり、どのタイプが才能がないかとか、どのタイプが健全で、どのタイプが不健全な困った人であるかというようなことを測るものでもないということです。
どのタイプにも強みと弱みがあり、どのタイプも非常に健全になりえるし、また不健全にもなりうる。より健全になると、そのタイプの資質に基づく能力がより開花してくる。自我のとらわれからの解放が進んでくるというものです。どのタイプも不健全になりうるし、不健全になれば社会により適応できにくくなり、対人関係にも支障をきたし始めるということです。
そのタイプの縦の構造を説明したものが、意識のレベルです。リソ&ハドソンのモデルでは、たんに縦構造になっているだけではなく、意識のレベルが下がるにつれ、意識が狭まってくるという構造になっています。
したがって、ファシリテーターは、各タイプについて説明するときに、9つのタイプをニュートラルに説明できなければならない。あるタイプの不健全な状態を説明するのであれば、他のタイプについてもその対比として他のタイプの不健全な状態を説明できなければならない、と思います。
そこで、学んでおきたいのが、リソ&ハドソンの意識のレベルです。
意識のレベルについて学び始めると、たいてい他人の不健全なレベルに気がつきやすく、自分の健全度が下がった状態には意識が及びにくいものです。これは気を付けなければならない点です。
ファシリテーターが自分は健全度の高い人間だと思ってしまったら、それは健全度の高い状態ではありません。
【意識のレベル】
以下のページをご覧ください。
性格の健全度ー1 性格と人格
性格の健全度ー2 性格の垂直構造
性格の健全度ー3 通常から不健全な段階
性格の健全度ー4 個人とレベルの関係
性格の健全度ー5 内面への取り組み
【ステップ8】
・センターの不均衡(アンバランス)について理解している。
・9つのタイプについて、センターの不均衡(アンバランス)の問題をニュートラルに説明できる。
本能・感情・思考の三つのセンター(中枢)については、エニアグラムの9つのタイプについての説明の次に説明できるところです。グルジェフからきている考え方に、知情意、ヨガのチャクラの考え方などとも、関連がありますね。センターの三つ組みは、それほど難しい話ではありません。
自分がどのセンターのタイプかというのも、わりあいとらえやすいかもしれません。タイプがはっきりわからなくても、どのセンターなのかが先に理解できるという人もいます。
センターの不均衡は、各タイプにおけるセンターの機能の混乱を示しています。例えば、自分は思考機能を使っているわけではないのに、「考えている」と思っていたり、「考え」と「感じる」ことの区別がつかなかったり、本能と感情が入り混じっていたり・・・。
リソ&ハドソンはセンターの不均衡について、わかりやすい説明をしています。ファシリテーターにとっては、自分がどのような混同を期待しやすいかをまず理解しておかなければなりません。
ファシリテーターは自分のセンターの人の言動は理解しやすいけれど、自分と違ったタイプの人の言動は理解しにくかったり、盲点になっている部分もあります。何をキャッチしにくいかを自分で知っておく必要があるでしょう。
と、同時に、9つのタイプの不均衡について、理論的に説明できるようにしておきたいものです。すべてニュートラルに説明できれば、各タイプの人に自分自身のテーマとして受け止め理解してもらえます。
センターの不均衡についての説明は、現在準備中です。
⇒センターの不均衡(準備中)
【ステップ9】
・親子関係の問題。
・対象関係のエニアグラムについて理解している。
親子関係は非常にデリケートな問題です。あまり大勢が集まって一日ワークをやるような場所には向きません。
信頼できる場が構築されている場合には、親子関係についてのエクササイズをやってもいいかと思います。親にしてもらったこと、してほしかったこと、してもらえなかったことなど。必ずしも、他の人の前で発表してもらうような形をとらず、ノートにメモした段階で追えて、そのワークについての感想を言ってもらうとか。
より込み入った親子関係の内容などは、比較的、長くやっていけるワークグループのなかで、また信頼のおける人たちとの関係でのワークで取り上げるテーマかと思います。
なぜ、自分のタイプを探っていく上で、親子関係についてのワークを取り上げるかというと、タイプが分からないという人の中に、またファシリテーターや他の参加者が見ても、ミスタイプと思われるような人がいた場合、それがどこからきているのかというと、親の価値観がペルソナ的にその人のタイプにかぶさっていることがあるからです。
本人はそのタイプではないが、父親がそのタイプであるとか、母親がそうだとか。あるいは、親がこういう価値観を尊重し、別の価値観を否定していた。その親の価値観が影響してしまっているといった場合があります。
アメリカのエニアグラム教師でセラピストのトーマス・コンドン師はとくにこの点について強調しています。自分のタイプを知るためには、親子関係についてみておく必要があるということです。
場合によっては、親がよしとする価値観と本人の持って生まれた資質や性格傾向が合致していないと、成長過程から大人になっても本人は苦しい思いをする場合があります。本来の自分のタイプを知ることは、親子関係にまつわる問題からの解放につながる場合もありえるでしょう。
とはいえ、非常にデリケートなテーマでもあるので、慎重に取り扱いたいものです。
さて、このステップ9のところで、理解しておきたいのは、それよりもさらに無意識の部分になってきます。
対象関係の問題です。
対象関係とは幼児期の愛着関係の問題ですが、リソ&ハドソンはエニアタイプと対象関係についても説明しています。この段階になれば、エニアグラムのタイプについて知りたいという人に、説明することは多くないかもしれませんが、つまり初心者レベルの話ではなく、中・上級者の内容になってきますが、ファシリテーターとしては、これは無意識の部分で対人関係に影響してくるものでもあるので、自らの傾向のみならず、他のタイプの傾向も併せて理解しておきたいものです。
対象関係(愛着関係)とエニアタイプ関連記事:
※異なる時期に書いたので内容が重複する記事があります。
●エニアグラムのタイプと対象関係の関連
●対象関係から見た三つ組み
●幼児期の愛着関係(内なる母親像・父親像)
●幼児期の愛着関係とエニアグラムの9つのタイプの関連
●幼児期の愛着関係(対象関係)タイプ1・4・7
●幼児期の愛着関係(対象関係)タイプ2・5・8
●幼児期の愛着関係(対象関係)タイプ3・6・9