健全度は基点となるレベルがあり
状態によってその段階を上下する
リソ&ハドソンによれば、健全度に関しては、個々人で基点となるレベルがあるとされています。その基点となるレベル(ホームベース)を中心に、そのときの状態によって、一時的にレベルが上がったり下がったりすると考えられています。
◆レベルは、1つの段階に留まっていることはないが、常に立ち戻る段階は決まっている。
これは経験的にも納得のいくことですね。たとえば、エニアグラムワークなどで言い分かち合いができ、自分でも気づきを得たと感じて家に帰る。その帰り道、電車の中で背中をガンと押された。あるいは、いい気分で家に帰ると、税金の督促状が来ていた。あるいは、妻や夫が不機嫌な顔で出迎えた…。
なんらかのストレスにより、健全度が一時的に下がることがあります。もっと、深刻な問題が生じたときには、それがしばらく持続することもあるでしょう。
その時、エニアグラムのタイプの分裂の方向の要素が浮上します。生きにくさを感じ、簡単には解決できない悩みやトラブルを抱えているとき、自分のタイプを分裂の方向のタイプと見誤ることがあります。
逆に、いろんな思い煩いを抱えていても、たとえば、素晴らしいインストラクターのヨガエクササイズを受ければ、気持ちは落ち着き、周囲のものが新鮮に見えたりします。日頃の喧騒を離れて、緑あふれる田舎家でゆったりすれば、いろんなとらわれから解放されることがあります。
ただ、それは健全度が下がってしまったということではなく、一時的に健全度は下がっているが、自分の中にある分裂の方向のタイプにとどまることで、恒久的に健全度が下がらないよう一時的に避難している状態と考えられます。
分裂の方向は、健全度が下がらないための一時避難地帯。
悩みや苦しみが深いとき、エニアグラムと出会うと、分裂の方向のタイプを自分のタイプと思うことはよくあることです。
健全度のレベルで、ホームベースとなっている基点そのものが下がるというのは、非常に大きなストレスがかかった時だと考えられます。
リソ&ハドソンの理論では、ふつうレベル5あたりが基点となっている人が多く、よほどのことがないと不健全のレベルに基点が下がることはないとされています。
◆一般的に、普通の人は段階4から段階6の間にいる。
エニアグラムのタイプは生まれ持ったもので、健全度は生まれてからの環境が大きく影響していると考えられています。たとえば、幼児期に非常に過酷な環境に置かれていると、健全な性格が形成ができません。
他方、健全度のレベルが上がるのは、一時的には体験することですが、基点となっているレベルそのものを上げるためには、意識的な取り組みが必要になってきます。
そして、レベルが上がると、質的な変化が生じます。基点が上がるというのは「変容」を伴う体験なのです。
リソ&ハドソンは、従来のエニアグラムを含むタイプ論は、こうしたダイナミズムを内包していなかったため、健全度がばらばらなタイプが一律に論じられたり、タイプの混同があったりした、と述べています。
健全度のレベルは、ある人がどれだけ自分の性格と同一化しているかを知る基準を与えてくれるものです。
その人がどれくらい自己防衛しているか、心を閉じているか、またどのくらい自由で、心を開いているか、ということを表わしています。
レベルが下がるにつれ、私たちの自由は、どんどん制限されてゆきます。
あまりにも性格のメカニズムと同一化しているため、完全にそれに突き動かされるようになり、自分自身にとっても、他の人たちにとっても、苦しみが増えることになります。
リソ&ハドソンは、人はどのレベルで機能していようと、自分の動機が健全な段階からくると思いがちだと述べています。自己の防衛により、理想化された自己イメージを見るというのです。
実際行動はレベル6の段階にあったとしても、自分でははるかに健全なレベル2あたりにいるとみなしがちなのです。
つまり、自分を実際以上にいいものとみなしているということです。
気分とレベルの違い:
レベルが上がることと気分の変化は同じではありません。気分がいい状態だからといって、必ずしも成長のレベルがあがったという目印にはなりません。
いい気分だといった上機嫌の反応は、こころの自由や本当の喜びと同じではありません。気分の上がり下がりをレベルと混同しないでください。
困難な状況の最中でも、心の落ち着きと活力があり、現実にしっかりと関わっていることが、スピリチュアルな成長を助けることになります。
◆ホーム・ベースの段階を上に上げるためには、人としての成長が必要。
その作業は、自分を変える作業であり、自分が安全のためにしがみついているものを、自分から手放す作業となります。
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