2018年6月30日(土)
エニアグラムの来歴2 イチャーソ、ナランホ
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性格構造を解き明かすエニアグラム


 グルジェフが西欧社会にもたらしたエニアグラム図を用いて、人間の性格構造を9つに分類したのは、南米ボリビア生まれの神秘思想家オスカー・イチャーゾです。

 イチャーゾはそれをエニアグラムではなく「エニアゴン」と呼び、彼が現分析と呼ぶ手法を用いて、「囚われ(passion)」「固着(fixation )」「美徳(virtue)」「聖なる考え(holy idea)」の四つの側面から、霊性と結びつく性格構造を分析しました。

 イチャーゾは南米チリのアリカ研究所で、自らの天才的な閃きをもとにした画期的なシステムについて人々に教え始めました。それは何らか意識の変容をもたらすようなトレーニングだったようです。イチャーゾのトレーニングを受けた人のなかに、現代心理学、精神医学の専門家で、神秘思想や東洋の禅などにも興味を持っていたクラウディオ・ナランホがいました。

ナランホがイチャーゾのトレーニングに参加したのは、たんなる学術的探求心からだけではなく、きわめて個人的な体験から霊的危機に直面するような実存的問題を抱えていたときだったようです。

 一見、偶然の出来事であり、偶然の出会いと思われることも、霊的なレベルで解釈すれば、つまりスピリチュアルな次元では、物理的時間の流れを超えた必然であり、自己の変革と変容へと至る必然的な道なのでしょう。意識の変容は外からの働きかけによって起こるのではなく、内部から生じるものです。
 

 
 ナランホは南米出身ですが、北米で研究活動を行っており、イチャーゾのもとでの体験を北米に持ち帰り、勉強会を開きました。彼はエニアグラムについてのイチャーゾのアイデアを、現代心理学と精神医学の用語を用いて説明し体系づけました。

 ナランホがイチャーゾのもとから持ち帰ったエニアグラムを学ぶために、彼は勉強会を開き、そこに集まってきた人々がいます。ナランホはその内容を外に漏らさないようにという約束だったらしいですが、それがあまりにも画期的なものであったためか、次第に広まっていくようになります。

 当初、ナランホが参加者に伝えた内容に関しては、外に漏らさないようにという約束だったらしいのですが、その内容があまりにも画期的なものであったためか、広く人々の間で知られるようになるまでには、それほど時間はかかりませんでした。

 1970年代ごろになると、アメリカでは一般の人々の間にも急速に広まり、個人の自己探求のためのツールとして関心を持つ人が増え、さらにビジネス分野でもリーダーシップやチーム育成、顧客対応のために有効な理論として、有名企業などでも社内研修などに取り入れられるようになってきました。

 ところで、ナランホのもとでエニアグラムを学んだ人の中には、北米の心理学者や精神科医のほか、イエズス会の修道士がいました。イエズス会はイグナチオ・ロヨラが創立したカトリックの修道会の一つです。青少年のキリスト教的教育と世界的な宣教活動を主な使命としています。東京四谷にある上智大学はフランシスコ会修道士によって1913年に創立されたものです。

 日本に初めてキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルは、イグナチオ・ロヨラともにイエズス会の創設に加わった人物です。イグナチオ・ロヨラは、祈りと瞑想を中心とした霊的修行法を考案し、『霊操』という本を書いています。イエズス会の修道士は霊操に、エニアグラムを取り入れ、キリスト教的信仰にねざすエニアグラム解釈を行っています。

 イエズス会士はキリスト教的信仰にねざすエニアグラム解釈を行うことになります。1987年に日本で出版されたエニアグラムに関する邦訳書は、『エニアグラム入門』(邦題)は、カトリックグループの著者らによるもので、キリスト教的霊性が色濃く反映しています。

 その後、エニアグラムの発展に大きく貢献した人物の一人が、エニアグラム・インスティチュートの創設者(故)ドン・リチャード・リソです。リソはイエズス会士だったことから、カトリックグループのエニアグラムと出会ったのでしょう。

 しかし、特定の宗教の枠を超えたところで、エニアグラムを体系化し、広く人々に伝えていくことを使命とし、エニアグラム・インスティチュートを創設しました。そして、ラス・ハドソンとともに、エニアグラムの研究と普及を行いました。

 リソ&ハドソンはアメリカ国内のみならず世界各地でエニアグラムワークやトレーニングを行い、日本や中国にも彼らから直接エニアグラムを学んだ生徒がたくさんいます。その人たちの中には、ビジネスパーソン、作家・ライター、心理カウンセラー、そのたさまざまな職業の人がいます。筆者も1990年代半ばから、リソ&ハドソンのエニアグラムのトレーニングを受けてきました。

 エニアグラムは1960年代から1970年代にかけて、自己探求のためのツールとしてアメリカで急速に広まり、日本には1980年代後半に紹介され、90年代半ばから注目を浴びるようになりました。一般に関心を持たれるようになったのは、エニアグラムの性格類型論的側面です。

※エニアグラムの来歴について、重複する部分がありますが3つのパートに分けてお話ししています。

 ⇒エニアグラムの来歴1

 ⇒エニアグラムの来歴2

 ⇒エニアグラムの来歴3


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