2018年6月30日(土)
エニアグラムの来歴3 リソ、カトリックグループ
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エニアグラムの創始者とエニアグラムの普及の経緯


 エニアグラムEnneagramの「エニア」enneaはギリシア語で数字の「9」を「グラム」gramは図を意味し、9つの点を持つ図形のことをさしています。

 この図は20世紀初頭にロシア(コーカサス地方出身)の神秘思想家G.I.グルジェフによって、西欧社会にもたらすされたものです。1960年代になって、グルジェフがもたらしたエニアグラム図に、南米ボリビア出身の思想家であるオスカー・イチャーゾが、現在一般に知られているような性格タイプのエニアグラムの基礎を考案しました。

 イチャーゾは、この図をもとに、彼が<原型分析>と名付けた方法を使って、人が陥りやすい感情的傾向を9つのタイプに分類しました。

 エニアグラムはかつて、スーフィ派と呼ばれるイスラム教の神秘教団において、門外不出の口伝として伝えられたという説が一般に流布し、日本でもそのように紹介されていた時期があります。しかし、現在ではこれは誤りとして否定されています。

 グルジェフはスーフィの知恵に通じていた人で、スーフィーの教えについても語っていることがあります。イチャーゾはグルジェフが得ていたのと同じ知恵の伝統に触れていたと考えられます。

 イチャーゾは、チリのアリカ研究所でエニアグラムを教え始めました。イチャーゾのもとには北米の著名な科学者なども訪れています。イルカの研究で有名になったジョン・リリーも、アリカ研究所で学んでいますが、その後エニアグラムについては深く関心を持たなかったようです。

 イチャーゾから直接教えを受けた人物の中に、心理学者で精神科医のクラウディオ・ナランホがいました。ナランホは当初、イチャーゾの直接の弟子として教えを受けていましたが、北米にもどってからは自らエニアグラムについて教え始めました。

 そのなかから、自らもエニアグラムについて教える人々が増え、1970年代には一般の人々の間でも、精神的な自己成長や対人関係改善のツールとして脚光を浴びるようになったのです。

 エニアグラムの来歴1でも触れたように、性格類型論としてのエニアグラムはグルジェフではなく、オスカー・イチャーゾの創案によるものです。イチャーゾがグルジェフの思想から何らかの影響を受けていた可能性はあります。

 また、アメリカのエニアグラム教師たちが、「伝統的なエニアグラム」と言うとき、エニアグラムのベースにはグルジェフの思想の流れも組み入れられていることを意味しています。グルジェフは9つのタイプについては言及していませんが、思考・感情・本能の三つのセンター(中枢)に関して多くを語っており、その思想がエニアグラムの9タイプの根底にあります。



◆エニアグラムとカトリックグループ

 ナランホを通じてエニアグラムを学んだ人々のなかに、カトリックのイエズス会の司祭職の人々がいました。イエズス会は、イグナチオ・ロヨラによって設立された修道会で、ロヨラは霊的修行体系である『霊操』という本を書いています。イエズス会の聖職者は、エニアグラムを霊的修行において有効なツールと認識し、エニアグラムについての本が書かれました。

 日本で最初に紹介されたエニアグラムについての本です。翻訳のタイトルは『エニアグラム入門』となっていました。1980年代後半のことですが、このころ日本に紹介されたエニアグラムには、カトリックのシスターで当時、聖心女子大教授の鈴木秀子氏の貢献が大きく、鈴木氏は2000年ごろ、PHP研究所から『9つの性格』というタイトルの本を出版。ベストセラーになっています。

 クラウディオ・ナランホに戻ると、彼は著書『性格と神経症』(邦題)の中で、彼自身の心理学や精神医学についての豊富な知識と臨床体験に基づいて、エニアグラムの9つの性格タイプを他の性格類型論や精神医学の理論と結びつけた考察を行なっています。カトリック・グループのエニアグラム解釈には、批判的なところがあるように見受けられます。
 
 ※現在流布している性格タイプ(性格類型論・パーソナリーシステム)としてのエニアグラムは、オスカー・イチャーゾを創始者とする。エニアグラムの進化と普及には、クラウディオ・ナランホが大きく貢献(当初、それを彼が望んでいたか否かは別として)した。それは単なる心理学の領域ではなく、サイコ・スピリチュアルな領域にまたがる。

◆米国エニアグラム研究所 ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン

 現在、エニアグラムを教えている人々には幾つかの流派がありますが、とくにアメリカのドン・リチャード・リソとラス・ハドソンの二人の貢献は大きいと思われます。

 リソは当初、イエズス会に所属していましたが、エニアグラムの知恵を、特定の宗教・宗派を超えて伝えたいという思いから、エニアグラム研究所を設立。一回り年下のラス・ハドソンと共同で研究を行い、米国からヨーロッパ、中国、日本など、世界各地でエニアグラムのワークショップを開催し、世界中にリソ&ハドソンの生徒がいます。

 リソ師はすでに故人となり、現在はラス・ハドソン師が中心になって活動を続けています。リソはエニアグラムはイチャーゾからナランホが発展させたエニアグラムを、さらにより発展的な形で継承し、体系化と緻密な理論づけを行ないました。リソ&ハドソンの米国エニアグラム研究所の日本支部は、現在、C+Fの高岡よし子・ティム・マクリーンが代表になっています。


※エニアグラムの来歴について、重複する部分がありますが3つのパートに分けてお話ししています。

 ⇒エニアグラムの来歴1

 ⇒エニアグラムの来歴2

 ⇒エニアグラムの来歴3

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