2019年5月3日(金)
性格の内向性・外向性とエニアタイプについてー1
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あなたは内向的か、外向的か?


 ユングの内向型・外向型についての考え方

 エニアグラムの9タイプの中から、自分のタイプを探し当てるプロセスは人さまざまです。比較的短時間のうちに自分のタイプに行きつく人もいれば、なかなか自分のタイプが分からない人もいます。また、人によっては、本来の性格ではないタイプを自分のタイプと見誤ることも少なくありません。

 自分のタイプを見つけにくい場合、またタイプを見誤る場合には、さまざまな理由が考えられます。一つには、その人本来の性格の上にペルソナ的な性格がかぶさり、その性格が表面に現れているということがあるかもしれません。私たちの性格形成には親や親に代わる養育者、その他影響力の強い大人の価値観や教育・文化的環境・周りの社会の価値観などが強く影響していると考えられます。

 比較的若いうちから、自我がしっかり確立されている場合には、その影響をはねのけて、本来の自分であろうとするかもしれません。しかし、自我の形成途中に刷り込まれた価値観は、その人の本来の性格を抑圧してしまうものにもなりかねません。自我が抑圧されている場合や精神的な問題を抱えている場合は、自分自身のタイプがわかりにくいケースがあります。

 自分のタイプが早くわかり、それを肯定的に受け止めることができた場合、自分の性格があまり抑圧されることなく成長してきたと言えるかもしれません。しかし、自分のタイプがすぐにわかったからと言って、その人が精神的により解放された健全な状態にあるということを意味するわけでもありません。

 人はみな、個人がたどってきた人生の歴史があり、他の人とは異なるその人自身の唯一の体験をしてきています。様々なものが入り混じり複雑な一人の人間が、たえず生成し続け、そのときそのときを生きているわけです。

 前置きが長くなりましたが、ここでは性格の内向性・外向性とエニアタイプについて取り上げてみたいと思います。

 人が性格について話題にするとき、よくあげられるのが内向的か外向的かという区別です。自分の性格の特徴について、たいていの人は自分を、そのどちらかに見なしているのではないでしょうか。

 性格の内向性・外向性について初めて言及したのは分析家のユングでした。ユングは「人間には相異なる2つのタイプがあって、一方は客体に興味を持ち、他方は自己自身(主体)に興味を持つのではあるまいか」「その結果、一方が見るものと他方が見るものとは二つのちがったものになってしまい、それぞれ全く違った結論にたっしてしまうのではあるまいか」(”Uber die Psychologie des Unbewussten” 『無意識の心理高橋義孝訳 人文書院)と考えました。「客体に興味を持つ」のは外向型、「自己自身(主体)に興味を持つ」のは内向型です。

 ユングは”Psychologishe Typen”『心理的諸タイプ』のなかで、「人間心理には、多くの個々の差異のほかにタイプの違いもある」と述べています(この本は『タイプ論』というタイトルでみすず書房から出版されています)。タイプの違いに関して、まっさきに注意をひいたのが内向型・外向型と名付けた二つのタイプだったというわけです。

 タイプ論のなかで、ユングは「タイプの違いが、人間関係のジレンマや誤解、争いの原因となっている」と述べています。これは彼が当初師事し、その後無意識についての考え方の違いからたもとを分かつことになった、フロイトとの関係での実体験を通しての考察でした。

 性格の違いが、対人関係でのさまざまな問題を引き起こす・・・

 エニアグラムの類型論が、アカデミックな分野での研究ではなく、むしろ一般の人々の間に流布し、自己理解や自己実現のための道具として、また社員研修などビジネスの現場などで着目され、用いられてきたのも、タイプの違いが、日常の様々の場面で人間関係のさまざまな軋轢の原因となっており、そのことを理解することが、問題の改善につながることが期待されてきたからだと思います。


 
 外向型の中にも内向性が・内向型の中にも外向性が

 内向型・外向型の違いは、ユングによれば「内向型は、関心の向きが客体から離れて主体へ向かうのに対して、外向型は、関心の向きが客体へと向かう。両者ではエネルギーの向きが違っている」ということになります。

 このエネルギーとはリビドーのことで、フロイトの場合、リビドーは性的エネルギーをさしていましたが、ユングの場合、リビドーは一般的な心的エネルギーととらえられています。外向型はリビドーが自己の外に向かい、内向型は内に向かうということです。

 ユングの考えでは、「人はみな内向・外向の二つのメカニズムを備えているが、たいていどちらかに偏っているのであり、相対的に優位な方がそのタイプということになる」のであり、習慣となった構えがタイプとしてとらえられています。

 ユングはさらにこの二つのタイプ(内向―外向)は、個々の心理的な機能によっても区別されると考えました。その機能とは、「思考」「感情」「感覚」「直感」の4つであり、これらの機能の一つが習慣的に優位になると、それに対応したタイプが成立することになります。したがって、性格のタイプは2×4で8つの基本タイプに分類されることになりますが、ここでのテーマは、4つの機能についてはとりあげず、あくまで内向型・外向型の2つの区分に留まりたいと思います。

 自分は外向型か内向型かと振り返ってみたとき、あなたは自分をどちらと見なしているでしょうか?

 エニアグラムのワークショップなどを通してみた筆者の経験では、外向型の人でも自分を内向的だとみなすことは少なくありません。しかし、それと比べて、内向型の人が自分を外向型だとみなすことは少ないように思えます。これはどういうことなのでしょうか?

 おそらく、誰でも自分を振り返り、自分はどういう性格なのか、どういう人間なのだろうかと自問しているときには、自分の内面を見ようとしているわけですから、たとえ外向型の人であっても、意識は内向きになっているはずです。そのとき、自分を内向型と思うのはこれは、自然なことだとさえ言えるのではないでしょうか。

 もう一つ、言葉の問題でしばしば生じるのが、「外向性」と「社交性」の混同ではないでしょうか。外向型の人は社交的な人が多いのは事実です。しかし、「外向的」イコール「社交的」ではありません。外向型の人が必ず社交的とは限りません。それほど社交的でない人もいます。「外向的」をそのまま「社交的」ととらえてしまうと、外向型の人の中に、自分は「社交的」ではないので、「内向的」だと思ってしまう人がいるかもしれません。

 ユングに話を戻しますが、ユングによれば、内向型と外向型の特徴は、一人の人の中にもある程度見られるものだと考えられています。

 ユングは「内向型の人の意識下には外向的な側面があり、外向型の人の意識下には内向的な側面がある」と述べています。ここが重要なところです。

 また、ユングのタイプ論には、内向性の基盤となっている人格構造が、外向性のそれより、「望ましくないもの」といったとらえ方はなされていません。ユングは、人は自分の内的世界と関係を持ち、リビドーを内向させることも、外的世界と結びつきを持ち、リビドーを外向させることも、ともに必要であるという立場で、外向性と内向性を対等の関係におきました。

 ところで、性格特性論の一つで、性格検査によく使われているビッグファイブ(性格の基本特性を5つの因子を用いて測定する)には、外向性・内向性尺度が用いられています。ビッグファイブで人の性格のすべてがわかる、画期的な性格検査だと主張する心理学者もいるようですが、そこに記述されている外向性・内向性の特徴は、自我のきわめて表層的な部分を扱っているもので、ユングのような意識の深層に触れるものではありません。

 ビッグファイブが性格検査に用いられるとき、外向性が高い方が「より望ましい」と判断される可能性があります。つまりは、外界=社会への適応をより適応的と見なしているということなのでしょう。

 

 

 
 内向型・外向型の特徴

 ユングの内向型・外向型の特徴について比較してみました。以下は主に『タイプ論』および『無意識の心理』からの引です。

【内向型】
「心的エネルギーを集中させ、周囲に対して強固な壁を作って内部にエネルギーを蓄積させ、その中で独自の世界を造りだし、それを基準にして自分なりの判断をするタイプ。客体はしばしば、自分の内面の世界を攪乱するものと受け取られる。」

「自我をあまりにも大事にしすぎ、自我が影響をうけるとなると、いかなる変化をも恐れる。」

「躊躇、反省、引っ込み思案、容易に胸襟を開かぬ、人見知りをする、いつも受け身の姿勢でいる、自分を蔭の方において周囲を疑い深く観察する。内向タイプの反省的本性は、このタイプの人間に、行動する以前につねに熟慮し、自省するようにしむける。これによって彼の行動は緩慢になる。外的客体(対象)に対する猜疑心や物おじは彼をためらわせ、そのため外部世界にうまく適応できない。」

「自分が客体と関係することに対してつねに深いところで感じている軽蔑を外向型の外向にも向けがち。」

【外向型】:
「自然に周囲の他人や物事に関心が向いていくタイプ。心的エネルギーが外に向かって拡散。このようなタイプは他人の言動や判断が大きな比重を持ち、態度を決定するときも周囲の状況や他人の動向に合せて決める傾向がある。」

「変化や変動のなかで自分らしさを感じ、自我はいかなる変化をも恐れない。」

「迎合的、一見打ち解けた、気さくな態度、どんな状況にも容易に適応し、すぐ周囲と関係を結び、くよくよせず、自信たっぷりで未知の状況へと飛び込んでい。外的事物に対して積極的な関係を持っている。外的事物によって引き寄せられる。新しい未知の状況が彼を誘惑する。未知のものを知るために、いそいそと飛び込んでいく。通例まず行動し、それからその行動について考える。それゆえ、行動は迅速で、試案や躊躇に妨げられることがない。」

「内向型に対して、内向型の人間が外向型に対して感じるのと同じ嫌悪・恐れ・ひそかな軽蔑を感じる。」

 いかがでしょう。あなたは内向型か、外向型か、どちらでしょう?

 では、次に内向性・外向性とエニアタイプの関連について見ていくことにしましょう。

 つづく→性格の内向性・外向性とエニアタイプについてー2

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