2019年5月25日(土)
『エニアグラム』リソ&ハドソン(翻訳) 待望の完結編
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エニアグラムの世界的指導者ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソンによる著書の邦訳が完結・リリースされました。


新版 エニアグラム【基礎編】 自分を知る9つのタイプ
エニアグラム【実践編】 人生を変える9つのタイプ活用法

 1999年に米国で出版された”The Wisdom OF the Enneagram”の邦訳です。著者のドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン師は、エニアグラムの世界的指導者で、両師よりトレーニングを受けた”リソ&ハドソンス・チューデント”は米国のみならずヨーロッパ、アジアその他、世界中にいます。もちろん、日本にもです。

 日本では90年代後半から2000年代にかけて、リソ&ハドソンによる来日セミナー及びトレーニングコースが開催されました。リソ師はすでに故人となられましたが、ラス・ハドソン師はそのあとを継いで、ほぼ毎年、日本のエニアグラム・スチューデントのために来日されています。

 ”The Wisdom of the Enneagram”が刊行された当初、邦訳はないわけですから、アマゾンから原書を取り寄せることになりました。あるいは、この本はリソ&ハドソン来日ワークの折に購入したのかもしれません。そのあたり、筆者の記憶はさだかではありません。写真は筆者の手元にある本で、最後のページにはお二人のサインが残っています。サインはアマゾンで購入後、あとからいただいたものだったかもしれません。

 The Wisdom of the Enneagram: The Complete Guide to Psychological and Spiritual Growth for the Nine Personality Types   Don Richard Riso /Russ Hudson

 この本が出版される以前にも、リソ&ハドソンの著書は何冊かあり、すでに日本語に翻訳されているものもありました。けれども、本書にはそれまで断片的にしか伝わっていなかった、本能のバリエーションと27のサブタイプについても詳しく言及されていました。

 本能のバリエーションは、おそらくイチャーゾからナランホに受け継がれたエニアグラムのなかにすでに語られていた内容なのですが、1990年代の終わりごろ、私たちはリソ&ハドソンのトレーニングコースで、その内容を知ることになりました。筆者はこのとき、自分のタイプの特徴が27のバリエーションの中から、くっきりと立ち上がってくるのを体験しました。それまでは、なお自分のタイプとされる特徴に、何か違う、自分は違うという感じがあり、納得のいかない部分があったのでした。

  ”The Wisdom of the Enneagram”は400ページ近い大著です。これを英語で完璧に読み込むのは並大抵のことではありません。翻訳が待ち望まれました。

 そして、2001年、『エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編 』高岡よし子+ティム・マクリーン訳が角川書店から出版されます。この本はじつは”The Wisdom of the Enneagram”の内容の約半分です。原書は基礎編とか応用編というふうに分かれているわけではなく、各タイプについての詳細が、タイプごとに記されています。訳者の高岡よし子氏・ティム・マクリーン氏は、原著者への了解を得たうえで、本書を2分冊とするために再構成しています。

 【基礎編】には意識のレベルに関する個所は盛り込まれていますが、本能のバリエーションに関する内容は含まれていませんでした。それでも邦訳は約300ページのボリュームになっています。

 【基礎編】を手にした読者は、【応用編】の出版をいまかいまかと待ち望みました。しかし、【応用編】は出版されることなく年月が経ちました。その間にも、リソ&ハドソン来日セミナー・トレーニングコースは何度も開催されましたし、米国エニアグラム研究所の日本支部の代表となられた翻訳者の高岡よし子氏とティム・マクリーン氏も【応用編】出版に向けて尽力されていたことと思います。

 【応用編】がなかなか出版に至らなかったことのいちばんの理由は、出版事情の変化が大きいと思います。IT化で紙の本が売れにくい時代になり、出版社の多くは新刊本の発行部数を減らすようになり、新しい企画にも慎重になってきました。読者層のすそ野が広い本なら企画が通りやすいかもしれないけれど、【応用編】のような本は読者が限られるとも言えます。

 書店の数も年々減ってきました。今ではもう、筆者がよく通っていたかつて、リソ師の本を手にした渋谷の大盛堂書店はじめ、新宿渋谷のメジャーな書店はほとんどが撤退し影も形もありません。あの時、書店で『性格のタイプ』という本を見つけていなければ、筆者はこれほどまで長くエニアグラムに関わり続けてきたことはなかっただろうと思うと、感慨深いものがあります。

 このたび、【実践編】が出版されるに先立ち、【基礎編】は『新版エニアグラム【基礎編】』として、最新情報が盛り込まれた形で出版されました。翻訳者らの誠実で息の長い取り組みには、ともにエニアグラムを学ぶ者として、リソ・ハドソンスチューデントの一人としても、心より感謝!しております。また、【基礎編】のまえがきにおいて、翻訳者の方々からエニアグラム・アソシエイツの名を挙げてくださったことも大変うれしく思っています。

 エニアグラムの神髄を学びたいと思われる方は、この2冊はぜひ熟読していただきたいです。エニアグラムは本来、文字情報だけで理解できるものではありません。本書の中には、数多くのエクササイズが紹介されています。自己探求のプロセスにおいて、「気づき」につながるワークは必須です。

 エニアグラムのセミナーやワークショップに参加される方は、リソ・ハドソンのエニアグラムを受け継いだファシリテーターによるワークで、「気づき」を深めるためのエクササイズを体験することができるでしょう。しかし、そういう場に出かける機会がない、行きたくてもいけないという方は、エニアグラムに関心を持っている友人や仲間など、複数の人で、小さなグループでいいので、これらの2冊の本を熟読しながら、エクササイズも取り入れ、ともに気づきをシェアできる機会を持たれることをお勧めします。

 エニアグラムの知恵は、本で読んだだけでは得られません。本に書かれてあることを、体験的に深めていくことが必要になってきます。

『新版エニアグラム【基礎編】』『エニアグラム【実践編】』が出版されたことにより、エニアグラムの知恵が読者の方々により深く浸透し、真の自己探求を目指す人々にとっての、道標となりますように。