2020年3月13日(金)
【エニアグラム入門】エニアグラムは心理学ですか?
img01

心理学?それとも心理学ではない?


 エニアグラムは心理学的な面もあります。ですが、近代から現代において発展してきた心理学の範疇には入りきらないものです。

 今日の心理学の起源は、古代ギリシャや古代エジプト、中国やインドにおける人間の精神と行動面における哲学的洞察にまでさかのぼります。心理学は宗教的な思想や哲学から分離していませんでした。

 近代から現代につながる心理学は、1879年、ドイツのヴェルヘルム・ヴントの実験心理学に始まります。ヴントはプロテスタントの牧師の息子でした。彼は実験心理学の創始者となったわけですが、その一方では実験で把握できるのは魂の活動のほんの一瞬のプロセスにすぎないことを確信していました(ゲルト・タイセン『原始キリスト教の心理学』)

 近代において発展してきた初期の心理学者として著名なのは、記憶の研究で知られるヘルマン・エヴィングハウス、アメリカのプラグマティズムの創始者ウイリアム・ジェイムズ、彼は『宗教的経験の諸相』という著書を表わしています、そして、「パブロフの犬」という言葉は誰でもが知っていますが、古典的条件付けで知られるロシアのイヴァン・パブロフですね。

 さらに、1890年代にはイギリスのジェームズ・キャテルが性格特性論を発展させ、質問紙による性格検査を行いました。そのころ、オーストリアではジークムント・フロイトが精神分析を創始しました。

 20世紀になると行動心理学や認知心理学などが発展していきます。人間の心の研究に対する学際的なアプローチとして、認知科学という領域での研究も盛んになってきました。

 エニアグラムは、こういった近代以降の心理学の発展の延長線上にあるものとはちょっとちがっています。アカデミックな理論ではなく、アカデミックに人間を研究するような領域のものではありません。


あなたが「心理学」というとき、それは何を意味していますか? それによって、答えは変わってきます、というのが答えです。

もし、あなたが近代以降の心理学の発展の延長線上にある、アカデミックな場所で研究されている人間についての学問を「心理学」と言っておられるなら、エニアグラムはそういうものとはちょっと違いますよ、ということです。エニアグラムは形而上学的な部分を含んでいます。


ただ、人間性心理学を提唱したアブラハム・マズローやスタニスラフ・グロフらのトランスパーソナル心理学は、比較的近いところにあると言えるかもしれません。とはいえ、エニアグラムをトランスパーソナル心理学に含めるかというと、それはまたちょっと違うということになります。

エニアグラムが扱うのは心理面だけではなく人間のスピリチュアリチィ(霊性)についてです。エニアグラムの知恵は、パーソナリティ(性格)=自我構造を探ることによって、その奥にある本質的なものを明らかにし、個々人に可能な精神的発展のための道案内となるものです。

そして、エニアグラムは心理学の研究者やなんらかの専門家による研究対象ではなく、誰もがアクセスできるツールであり、その使い方を学んでいけば、自分自身についての多くの気づきが得られ、周りの人との人間関係や自分自身の生き方が質的に違ってくるというものなのです。


なんだか、よけいに説明がむずかしくなってしまいました。

いずれにせよ、ある時代や人がもたらす知恵は相互に関連し合い、底の方を流れるものは共通の源からくるものであったり、時代の共時性によってさまざまな方面から、同時に同じような考察が生まれることがあります。


最新の記事