2020年3月1日(日)
センターの不均衡について‐3:タイプ5、タイプ7、タイプ8
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通常のタイプは自らのセンターの機能を適切に使えていないー隣のセンターの機能を巻き込む「ごたまぜ状態」のタイプ


各タイプがどのようにバランスを欠いた状態にあるか?

 センターの不均衡-1でとりあげた➀のグループの続き、タイプ5、タイプ7、タイプ8を取り上げます。



タイプ5:観察する人・知的に有能でありたい人
【特徴】思考センターのタイプで感情センターと隣り合っている。

 思考センター、グルジェフでは知性センターと呼ばれますが、頭の中の思考機能と関連の深いタイプです。

 自分のエニアグラムのタイプを知ろうとし、最初に各タイプの性格説明を読んだり、各タイプの項目をリストアップした自己診断などをやってみて、自分はタイプ5だと思うという人が、実際にはタイプ5ではない人(のちにそのことがわかる)の中にもわりあい多くいるようです。

 思考の働きとは何を意味しているのか?

 思考センターの働きとして、エニアグラムの記述をざっと読んで、「あっ、自分はタイプ5だわ」とすぐに結論付けられるような人は、タイプ5ではないかもしれないと思った方がいいかもしれませんね。なぜなら、タイプ5は即断即決はしないでしょうから。考えてみなければ、答えは出せません。答えが出るかどうかもわかりませんね。

 わたしたちは「考える」ということについて、”誤った考え””を持っていることが多いのです。

 タイプ1のところでお話ししたように、自分の考えというものが過去の経験に基づくものであったり、自分の主義主張、それも経験的なものからきているのかもしれませんが、「これが正しい」「あれは間違っている」という価値判断になっていることは、どのタイプであれよくあることです。

 思考の働きというのは2つ、一つは論理空間の広がりを持ち、その論理空間はあらゆる可能性に向けて開かれている、ということです。そこで、思考は論理の筋道を組み立てていくことによって、何らかの仮説に導かれる。しかし、その仮説が正しいかどうかということは、その時点では結論付けることができません。価値においてはニュートラルなのです。

 あなたはそのような考え方をしていますか?

 思考機能の働きのもう一つは、インスピレーションです。リソ&ハドソンの表現では「パラボラアンテナ」、リソ&ハドソンでなくても、よく用いられるたとえですが、あるアイデアが降ってくる。

 しかし、このようなインスピレーションも、突然にやってくるわけではなく、思考を駆使して考えて考えて考え抜いたところで、ある対象への深い集中と理解があってこそ、降ってわいてくるものでしょう。

 ふだん、ぼうっとしているだけで、あるとき何かが降ってわいてくるということがありうるでしょうか?傍から見ていて、ぼうっとしているだけのように見えても、「考える人」は考えています。しかし、「ちょっと考え事をしていた」という人は、ただぼうっとしていただけ、ということはよくあるものです。

 19世紀半ば、ドイツの化学者フリードリヒ・アウグスト・ケクレは、6個の炭素原子が亀の甲のように並んでいるベンゼン環(芳香のする炭化水素分子)の構造を、夢の中で発見したという逸話が残っています。彼は遅くまで仕事をしていて最終の乗合馬車での移動中に夢を見たのだそうです。

 ロシアのドミトリ・メンデレーエフ(1834-1907)も、夢で大きな科学的発見をしたというエピソードがあります。彼はある朝、連日の研究に疲れて、転寝をしてしまったとき、夢の中で元素がしかるべき順序で並んでいるのを見たのだそうです。目が覚めて、急いでノートに書きつけたのが周期表です。

 これら歴史的に有名な二人の化学者の例は、思考を駆使することによってインスピレーションが降りてくるということを物語っています。

 タイプ5は自らの思考を感情によって強める

 さて、思考センターのタイプ5は感情センターと隣り合っています。感情センターのタイプ4は、自らの感情を思考によって強める傾向がありました。通常の意識状態では、感情と思考がごたまぜになって区別がつきにくくなっています。タイプ5においては、頭の中で試行している事柄に感情移入する。と、言ってもいいかもしれません。
 
 話を分かりやすくするために例を挙げれば、バーチャルな空間の出来事に熱狂するような感じでしょうか。

 通常のタイプ5は現実から遊離して、頭の中の思考空間に引きこもる傾向があります。はたからは、何もしていないようにみえても、頭の中の思考空間は活発に機能しており、そこにエネルギーが投入されています。

 通常のタイプ5は自らの感情について考えてみなければわかりません。アニメ『エヴァンゲリオン』の綾波レイと碇シンジのセリフ
 「こんな時、どんな顔をすればいいのかわからない」(レイ)、
 「笑えばいいと思うよ」((シンジ)

 『ヴァイオレット・ヱヴァ―ガーデン』のヴァイオレットのセリフ
 「愛って何ですか? わかりません、少佐」

 たとえば、タイプ5は愛について考える。愛についての考えを感情によって強める。生身の役者が恋愛関係を演じるより、バーチャルな世界の愛についての物語の方が、感情移入しやすいかもしれません。

 タイプ5はオタク的な人と呼ばれることがあります。オタク的な世界は思考と感情の入り混じった世界と言えるのではないでしょうか。

 世界共通語にもなっている「オタク」という言葉を、いまだにネガティブにとらえる人もいるようですが、筆者はそういう立場には立っていません。

 本能センターがまだ自由だが、意識的な自我状態が狭まると本能センターをも巻き込む

 さて、この段階ではまだ本能センターは巻き込まれていません。物事に集中すると、本能センターのニーズを満たすことがおろそかになりがちなタイプ5ですが、きちんとした生活習慣を保ち、食事や運動に留意することで、バランスを図っていくことができます。これはタイプ4の場合とも似ていますね。

 ドイツの哲学者イマニュエル・カントは、毎日定刻に彼が住んでいたケーニヒスベルクという町を散歩していたそうです。頭の中の思考を使う人に、散歩は向いています。

 より健全なタイプ5は知的に開かれています。偏見や固定観念にとらわれず、地位や名誉、物質的なものに執着しません。真に平和を愛する人々でもあります。

 タイプ5の意識状態がより狭まってくると、思考と感情の混合物に本能センターの機能を巻き込んでしまうことになります。バーチャルな世界に感情移入しすぎると、部屋の中に引きこもり、食事や睡眠、身の回りのことがまったくおろそかになっていってしまうわけです。

 健全なタイプ5は知的に開かれています。偏見や固定観念を持たず、ニュートラルなものの見方をします。健全なタイプ5は物事に執着せず、欲がありません。真に平和を愛する人でもあります。




タイプ7:熱中する人・あれもこれもを求める人
【特徴】思考センターのタイプで本能センターと隣り合っている。

タイプ7は外向的な思考タイプですね。通常の自我状態にあるタイプ7は、思考に本能を巻き込んでしまっています。タイプ7の性格の特徴については、活発であるとか頭の回転が速いタイプと表現されますね。活発であるというのは行動の側面、頭の回転が速いというのも考えをすぐ表に出し、行動に移そうとするところにあります。頭の中の考えをずっと、そのままホールドしておくというタイプではないわけです。

 エネルギーの速度としては、頭の回転の方が行動より早くなります。本能的なエネルギーは身体とつながっているということなので、それほど早くはないわけで、タイプ7においては行動よりもさらに思考の方が先を行くことになります。

 そこで、タイプ7の短所とか弱みとして記述される「計画倒れ」「アイデア倒れ」といった傾向が出てくるわけですね。イチャーゾはたしか、タイプ7の自我を計画自我と言っていたかと思いますが、計画というものが予定を組み段取りを整えて実行していくものであるとするならば、タイプ7はより正確には計画はしない。

 計画を立てるとそれに縛られてしまうからです。

 実際、通常の自我状態にあるタイプ7の立てたプランというものは最後まで遂行されないことが多いでしょう。そのプランが実行されているとき、タイプ7はすでにそのさきのプランに関心を向けているからです。

 もちろん、センターのバランスがとれたより健全なタイプ7であるならば、自分がたてた計画はきちんと実行に移しやり遂げるでしょう。そのあたりが健全度のレベルの違いになってくるのかもしれませんね。

 しかし、通常の自我状態にあり、思考と本能のごたまぜ状態にあるタイプ7は、一つ一つのことが成し遂げられていないことになかなか気づけません。タイプ7はいまここではない未来のより明るい可能性に目を向けているからです。

 選択肢は他にもある。

 一つのプランが遂行され、うまくいったとしても、その下にはどれだけ多くの途中で投げ出された計画、すでにただの思い付きとなってしまった考えがあったことでしょう。通常の自我状態にあるタイプ7はしかし、すでに過去のものになってしまったそれらには執着しません。

 対人関係においても、タイプ7は特定の人に執着しない傾向があります。つねにいちばん興味深いのは、ごく最近知り合って何らかのプランを共有できそうと感じた人であり、一緒に走り出せる人です。が、その先、ずっとともに走り続けられるかどうかはわかりません。このあたりが、友人知人は膨大な数になるが、ごく親しい友人や何かを共に築き上げてきた人がいるかどうかということになると、きわめて希薄な関係がほとんどということにもなりかねないのです。

 タイプ7にとって、この段階でまだ自由なのは感情センターです。タイプ7の感情はそれほど複雑に込み入ったものではありません。隣あったタイプであるタイプ8のように無邪気なところもあります。とりわけ、ウイングが8のタイプ7の感情はシンプルです。

 しかし、より自我状態が狭まると、タイプ7は感情センターをも巻き込んでしまいます。思考の判断が優先し、感情的に冷酷になりえます。怒りやイライラといったネガティブな感情が表出されることもあります。屁理屈やつじつま合わせが多くなり、欺瞞的になることもあるでしょう。

 本来、バランスのとれたタイプ7の頭の中は曇りなく澄み切っています。その頭の中でリアリティを視通し、リアリティとつながることができるタイプです。純粋でポジティブな感情を持っています。


 



タイプ8:挑戦する人・支配しようとする人
【特徴】本能センターのタイプで思考センターと隣り合っている。


 本能センターのタイプ8は思考のセンターの隣に位置しています。9つのタイプのなかでも、いちばんエネルギッシュでタフ、ガッツがあると言われるタイプ8です。ガッツというのは腹のエネルギーですね。よくタイプ8を怖いという人がいますが、タイプ8が自らのセンターのエネルギーとつながっていれば、人にそういった印象を与えることはないと思います。

 タイプ8に限らず、通常の自我状態では、私たちは自分のセンターとうまくつながっていないのです。タイプ8はそのとき、隣の思考センターを巻き込んでいます。もとより、他社に対して、挑戦的、ときに挑発的、好戦的、敵対的なタイプですから、思考センターを巻き込むと、本能センター独特の腹が座った感じが薄まり、思考の持つ独特のシャープさのようなものが加わってきます。それはどこか容赦のない感じや抜け目のない感じになるかもしれません。

 筆者はエニアグラムと出会った当初、思考の性質というものをまだよく理解していなかったので、自分はタイプ5だと思いました。哲学や科学に興味があるとか、文章を書くことを生業にしていこうとしている自分が、タイプ8である可能性など、万に一つも考えられませんでした。当時の自己診断チェックリストは、もともと英語からの翻訳だったかと思います。その翻訳の文体にも何らかバイアスがかかっていたのではないかと思います。

 自己診断チェックリストを制作するにも、タイプの特徴をよく知り、語彙を選んでいかなければなりません。そのころはまだ、十分に検討されたものがなかったと思います。そういうこともあって、筆者はどのタイプの人も、語彙やニュアンスがフィットしないために、自己診断が違ったタイプの方に向かうということがより少なくなるような、よりリアルなそのタイプの人に当てはまるようなチェックリストを作っていきたいと思うようになりました。

 それはさておき、タイプ8の分裂の方向はタイプ5ですから、当時の筆者自身の心理状態は、分裂の方向にあるタイプ5的な特徴を帯びた内向性を有していたということも否めません。当時は、本能センターとのつながりよりも、思考を使うことでしか生き延びることができなかったというような状況にありましたので。

 そのような状態から、現在までエニアグラムの学びを続け、エニアグラムを通して友人や仲間とのつながりができたことは、ドン・リチャード・リソ師とラス・ハドソン師のエニアグラムと出会えたことが非常に大きく、幸運なことであったと思います。

 私たちは何を学ぶかよりも、誰から学ぶかということの方がより大切な時があります。その両方がそろっていれば、これは本当に幸運なことだといえましょう。

 さて、話がそれてしまいました。

 タイプ8の思考は行動と結びついている

 通常の自我状態にあるタイプ8は、本能センターに思考センターを巻き込んでしまっているわけですが、このときタイプ8が考えていることは、本能のニーズと結びついたことや行動に結びつくことです。タイプ8の頭の中にある考えは、けっして抽象的な事柄ではありません。

 筆者自身もそうであったように、タイプ8は生きることに絶望して引きこもるのではなく、生きるために、生き延びるためにどうすればいいのか、どう行動すればいいのかを考えるわけです。タイプ8の考えは実際行動に結びついていきます。

 タイプ8にとって、この段階ではまだ感情センターが自由です。タイプ8は無邪気さという美徳を持っています。タイプ8の感情は純粋です。この段階ではタイプ8のハートはまだ感じる余地があるわけです。

 しかし、意識的な自我状態がより狭まってくると、タイプ8はこの感情センターをも巻き込むことになります。本能と思考のごたまぜ状態の中にさらに巻き込まれた感情は優しさや思いやりからはほど遠いもので、すさんでいて、殺伐としています。その感情は怒りと復讐心に満ちているものかもしれません。

 しかし、よりバランスのとれたタイプ8は心が広く寛容で、無邪気でいながら、力強いやさしさがあります。
 

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