2018年10月2日(火)
性格の類型について2 タイプは認知の歪み
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性格とは神経症であり、
タイプとは認知の歪みである?!


クラウディオ・ナランホにもどる
 エニアグラムの類型論の基礎は、南米ボリビア出身のオスカー・イチャーゾによって体系づけられました。イチャーゾはグルジェフの影響を受けた人物で、グルジェフが通じていたと考えられる古代の思想の源泉に触れていたと考えられます。

 イチャーゾの活動は1960年代アメリカで注目されるようになりました。エニアグラムの図形はグルジェフが西欧社会にもたらしたものですが、この図に9つの性格タイプを配したのは、このサイトでは繰り返しになりますがイチャーゾです。
 
 イチャーゾ、グルジェフともに、神秘主義的な色合いが濃く、思想家であるばかりでなく実践家でもあったわけです。(思想家は本来実践家であるべき云々ということは別にして)。より知的好奇心旺盛で探究心のある読者は、現代心理学や精神医学のみならず宗教思想・哲学的な文献などにも、自ら当たらなければならないという必要性を感じるようになるでしょう。

 エニアグラムと現代心理学・精神医学との接点は、イチャーゾの(当初)弟子であった心理学者・精神科医のクラウディオ・ナランホによってもたらされました。ナランホはチリ出身で北米に移住した人物です。

 エニアグラムがどこから来たのか、根本にあるものはナランホの著書『性格と神経症』Character and Neurosis: An Integrative View(1994)のなかに、ほぼ語りつくされているといっても言い過ぎではないと思います。ですので、「エニアグラムとは何か?」知りたい方には、ナランホの著作をお読みになることをお勧めします。

 ただ、そのころのクラウディオ・ナランホの著作から読み取れるエニアタイプは、あまりポジティブには受け止められないところがあります。自分のタイプと思しきところを読むと、ちょっと落ち込むというか、抑うつ的な気分になることもありえます。
 
 ナランホの文脈では性格とは「神経症的傾向」であり、エニアタイプとはそれぞれの「認知のゆがみ」cognitive errorを表わすものだと言えます。

 ※性格の健全度については、リソ&ハドソンの理論をもとに、別のところで述べます。

 ナランホはその著書の序説において、グルジェフの思想への関心と影響がありながら、同時にシェルドンの思想と研究に関心を持ち、肯定的に受け止めていることを明らかにしています。

 ナランホは、エソテリックな方面からの洞察と、科学的なアプローチという両面から、パーソナリティ(性格)構造を追求してくのです。「エソテリック」とは、選ばれた少数者に伝えられる秘儀ないしは神秘的な教えを意味しています。

 シェルドンの研究はその方法論が批判され、否定的にとらえられる向きもあったようですが、ナランホはそのことを承知しながらも、その後、性格研究の主流となってくる因子分析よりも、この類型論のほうが経験的にきわめて妥当であるという見解を示しています。ナランホは英国のハンス・アイゼンクや米国のレイモンド・キャテルの論文も研究していました。

 イチャーゾのエニアグラムはナランホを通して、北米に広がっていくことになります。そして、1970年代、エニアグラムは個人の自己啓発のためのツールとして注目されるようになったというわけです。日本に紹介されたのは1980年代後半のことです。

 
テーマ  性格のタイプ /
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