2018年6月30日(土)
性格の類型について1 人をタイプに分類すること
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性格の類型について
「物事の理解の初めは分類することにある」


 生物でも無機物においても、何かを理解しようとするとき、それについてのたくさんの事例やサンプルを集め、似ているものとそうでないものと分け、比べてみると分かることがあります。

 分類することは理解すること。物事の理解の初めは分類することにあるといってよいでしょう。そして、人を類型化してとらえることは、「人間とは何か?」を理解するための事の初めです。

四体液説から導きだされた気質の類型
 人の性格をいくつかのタイプに分類し、理解しようとする試みは、古代からありました。古代ギリシャのガレノスは医学の始祖ヒポクラテスから受け継いだ四体液説を気質の類型に発展させました。

 ヒポクラテスは、人間の体液は「血液」「粘液」「黒胆汁」「黄胆汁」からなるとしました。これは万物の根源(アルケー)は火・土・水・空気の4つからなるとしたエンペドクレスの四元素説の影響をうけています。ヒポクラテスはマクロコスモスとミクロコスモスには緊密な相関関係があると考えたのです。

マクロな宇宙とミクロな宇宙(人間)
 エニアグラムもこのマクロコスモスとミクロコスモスの相関関係と言う考え方があります。人知を超えた大宇宙の神秘、神・宇宙の意志・聖なるもの・超越的存在など、それについての考え方や表現はいろいろあるにせよ、人は神や宇宙の意志とつながっている、あるいは神や宇宙の意志を反映している存在であるという考え方です。

 ちなみに、東洋では森羅万象を陰陽の消長でとらえる陰陽思想と万物の原理を木・火・土・金(ごん)・水の五行で説明する陰陽五行説で、人の運勢や健康状態などが説明されます。

 これらの思想の影響を受け日本で作られた九星気学という占いがあります。九星気学では生年月日から、人を9つの星に分け、運勢から性格や他者との相性まで読み解いていきます。エニアグラムが他人の性格を9つの基本タイプに分類することから、九星気学のタイプと同じではないのかと問う人がいますが、エニアグラムのタイプは生年月日から導くものではありません。エニアグラムは占いではありません。



ガレノスの4体液説からクレッチマー、シェルドンへ
 さて、ガレノスの4種類の体液に基づく気質の4類型は、長く西欧社会に影響を与えてきました。中世後期にアラビアから伝わった占星術の影響を受けて、星座と性格に関連があると考えるようになった人々もいます。生まれた日時から、個人に支配的な星座を導き、性格とも関連付けて人の運勢を読み解いていくわけです。

体液と気質の関係:ガレノスによる四類型
血液:春  熱・湿・・・多血質:楽天的
粘液:冬  冷・湿・・・粘液質:鈍重
黄胆汁:夏 熱・乾・・・黄胆汁質:短気
黒胆汁:秋 冷・乾・・・黒胆汁質:陰鬱

メランコリー気質について
 また、四体液説の一つ「黒胆汁質」のタイプは土星と結び付けられ、メランコリーの気質と考えられました。15世紀の画家デユーラーは、黒胆汁のメランコリー気質は、芸術家の創造性と関係があるとしまし。

 メランコリー気質は、のちに紹介するエニアグラムタイプ4の気質と重なる部分があります。あなたがエニアグラムタイプ4か、またはタイプ4的な世界観に惹かれる人であれば、「メランコリー」という言葉自体が魅力的な響きをもっていることでしょう。

体格・気質・性格 
 ガレノスの影響は近代にまでおよび、次に着目すべき類型論が出たのは、二十世紀になってからのこと、ドイツの医学者エルンスト・クレッチマー(1888-1964)による三類型です。クレッチマーは、体格と気質の関係に着目し、性格の三類型を導き出しました。痩せ型・肥満型・筋肉質型のそれぞれに、分裂気質・躁鬱気質・粘着気質が対応します。

クレッチマーの三類型
やせ型:分裂気質:物静か・非社交的   統合失調症
肥満型:循環気質:社交的・温厚 明るいが時に落ち込む 躁うつ病
闘士型:粘着気質:頑固、融通が利かない、時に爆発的に興奮 てんかん

※やせ型は四肢が細長く、胴周りが薄い。脂肪のつきにくい体型。肥満型は体全体に脂肪がつきやすく、柔らかい体つき。太りやすい体質ではあるが、必ずしも太ってはいない。闘士型は筋肉質で、四肢や胴周りの肉づきがよく、硬く引き締まっている。「分裂気質」というのはかつて精神分裂病と呼ばれた統合失調症の病名が、「循環気質」は「そううつ気質」、「粘着気質」は「てんかん気質」と名付けられていました。

 アメリカの心理学者ウィリアム・シェルドン(1899-1964)は、クレ
ッチマーの影響を受け、内肺葉・外肺葉・中胚葉型という三つの類型を発表しています。シェルドンは、クレッチマーの類型に飽き足らず、独自の体質心理学の立場から、一般の人々の身体の生理学的特質と行動心理学の関係から、三つのタイプを導き出したということですが、これはクレッチマーの三類型とほぼ一致しています。

シェルドンの三類型
 内肺葉型:(内臓緊張型)社交的で生活をたのしむ・・消化器官がよく発達
 中胚葉型:(身体緊張型)積極的で大胆な・・筋骨がよく発達
 外肺葉型:(頭脳緊張型)非社交的で生理的に過敏な・・皮膚と神経系がよく発達

※シェルドンの研究は、人間の気質の三つの領域は胎児の最初の細胞の三つの層に由来する身体構造に密接に関連しているという考えに基づいています。

※内肺葉型はクレッチマーの循環気質、中胚葉型は粘着気質、外肺葉型は分裂気質に対応します。

エニアグラムの類型論
 エニアグラムの9タイプは、異なる角度から共通の傾向に焦点を当てることによって、さまざまな三つ組みに分類されます。クレッチマーやシェルドンの三類型にやや近いものとしては、のちにご紹介するセンターの三つ組みがあります。もっとも、センターの三つ組みは、当初クレッチマーが名付けたような精神病理の意味合いはありません。

ユングのタイプ論
 次に着目すべきはスイスの心理学者ユングの『タイプ論で』す。ユングはPsychologishe Typen”『心理的諸タイプ』を出版(1921年初版)。これは『タイプ論』というタイトルでみすず書房から出版されています。そのなかで、ユングは「人間心理には、多くの個々の差異のほかにタイプの違いもある」と述べています。

 タイプの違いに関して、まっさきに注意をひいたのが内向型・外向型と名付けた二つのタイプでした。内向性・外向性はよく知られた言葉で、「自分は内向的な性格だから」とか、「あの人は外向的な性格の人」というふうに一般によく用いられています。

内向・外向
 内向型・外向型の違いは、内向型は、関心の向きが客体から離れて主体へ向かうのに対して、外向型は、関心の向きが客体へと向かうということです。両者ではエネルギーの向きが違います。ユングの考えでは、人はみな内向・外向の二つのメカニズムを備えているが、たいていどちらかに偏っているのであり、相対的に優位な方がそのタイプということになるわけです。習慣となった構えが、タイプとしてとらえられるということです。

ユングの8類型
 さらにユングはこの二つのタイプは、個々の心理的な機能によっても区別されると考えました。その機能とは「思考」「感情」「感覚」「直感」の4つで、これらの機能の一つが習慣的に優位になると、それに対応したタイプが成立します。したがって、2×4で8つの基本タイプに分類されるわけです。

 ユングは内向型・外向型という尺度に加え、思考・感情・感覚・直観の四つの精神機能の違いから8つの類型を導き出しました。

 ユングのタイプ論を発展させたのが、アメリカのマイヤーズとブリックスで、1962年にマイヤーズブリック性格タイプ指標が開発されています。これは最終的に16の性格に分類されるものとなっています。

 ユングの8類型とエニアグラムの9タイプについては、エニアグラムに関する本の著者たちの中で言及されていることがありますが、興味のある方はそちらを参考にしてください。

参考図書:


テーマ  性格のタイプ
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